アイ・オー・データ機器から発売されていた法人向けNAS「HDL2-X2」。本来はLinuxベースの独自OSを搭載していますが、中古で購入した場合、ディスクが抜き取られていたり、初期化されていたりすると、その独自OSは利用できません。リカバリーイメージも公式サポートポータルからダウンロードできないため、代替OSの選定が必要となります。今回は、XPEnologyのRedpill loaderをカスタマイズした「Arc Loader」を使用してDSM7.2をインストールする手順を紹介します。
代替OS候補
- Windows Server評価版:
評価期間180日、コマンドで評価期間をリセットすることで最大3年間利用可能。 - TrueNAS (Core/Scale):
定番のNAS向けOS。FreeBSDベースのCoreとLinuxベースのScaleがあります。 - DSM on XPEnology environment(Arc Loader):
Synology社のNAS製品向けOS「DSM (Disk Station Manager)」を非公式ハードウェアで動作させるプロジェクト。今回は、XPEnologyのRedpill loaderをカスタマイズした「Arc Loader」を使用。
XPEnology (Arc Loader)とは
XPEnologyは、Synology DSMを非公式ハードウェアで動作させるためのプロジェクト・コミュニティの総称です。Redpill loaderは最新のDSMブートローダーであり、今回使用するArc Loaderはそれをカスタマイズしたものです。Arc Loaderを使用すれば、一般的なX64 Windows PC、今回のHDL2-X2でもDSMを実行できます。
注意点:
HDL2-X2でDSMを実行する行為は、Synology社のソフトウェア使用許諾契約 (EULA) に違反する可能性があります。Arc LoaderによるDSMの利用は、法的リスクを含む自己責任の行為となります。
- Synologyのサポートは一切受けられません。
- Arc Loaderの商用利用は禁止されています。
- 当ブログはArc Loaderの利用を積極的に推奨・サポートするものではありません。
セットアップ手順
セットアップ操作をYotube動画としてまとめました。こちらの動画をご覧ください。
下記は、動画のなかでSSHコンソールで実行したコマンドです。
privilegeファイルの更新コマンド(packageをrootに置換)
sudo sed -i 's/package/root/g' /var/packages/r8152/conf/privilege
結論
ファイルサーバとしてのパフォーマンスは良好です。しかしながら、今回、Arc loaderで構築した環境ではSynology DSMのフルスペックの機能が利用できないため「使わない」という結論に至りました。
特に、Active Backup for Businessが利用できない点が大きな理由です。
実行していいのか問題についての補足
XPEnologyプロジェクト側は、DSMがOSSを利用しているため、OSSの共有と利用に基づいて活動していると説明しています。しかし、DSMの全てがOSSではなく、Synology社が独自に開発したソフトウェアも含まれており、これらはSynlogyハードウェアと組み合わせて利用することを前提としています。個人利用であれば問題視されにくい傾向もありますが、商業利用や明確な著作権侵害であれば訴訟のリスクも高まります。技術的には可能であるものの、法的なリスクを理解した上で実際に利用するかどうかは自己責任で判断する必要があります。
関連リンク
- カーネルVM探検隊@北陸パート6「xpenlogyなるアングラプロジェクト廻りについて語るやつ」
- IT Media: Active Backup for Business 関連情報
- Synology公式: Active Backup for Business ページ
今回利用した起動用USBメモリ
USBブート用にUSBメモリを買いました。サンディスクのUSBメモリは、信頼性・高速性・耐久性を備えた優れた製品です。 自社製造、厳しく選別された高品質のメモリチップは、 製品寿命とデータ保護に直結します。